知事というのは、戦前は内務省の役人が選挙を経ずに就くもので、当時の官吏区分でいえば勅任官に当たる。勅任官とは、いまでいえば中央本庁の次官・局長クラスであり、官僚トップ扱いである。ちなみに、戦時中に設置された東京都長官(現在の都知事)は、首相や閣僚と同等の親任官(勅任官より上)とされた。

戦前の内務省が強い権限を持っていたとされるのも、知事をはじめとして警察や土木、公衆衛生、労働など、人々の暮らしに身近な部門を統括していたことによる。「官庁のなかの官庁」と呼ばれた所以である。

社会の発展とともに、内務省からいくつかの部署が分離していったけれども、戦後になって内務省が解体工事されて、知事も官選から、選挙を経て選ばれるようになった。都道府県における権限は広く、国政でいう大統領制(首長制)のような役割を担っている。
ただし、国に対しては必ずしも強く出られなかった。交付金も、紐付き(特定の事業に限定した資金)である場合が多く、特に地方の首長は国からの事業や資金を得るために、国と距離の近い官僚出身、それも地方行政を担当する自治省出身者が目立った。